青春Hセカンドシーズン 第3作

絵のない夢

信じて欺かれるか? 欺いて堕ちるか?
汚れた金に群がる歪んだ奴らのクライム・ラプソディー。

目黒鹿鳴館に行った。作業をしていた人に「あのー、こんどビジュアル系バンドの追っかけしてる女の子の映画撮るんですけど・・・」とまったく意味不明で不審者丸出しのぼくらの話しを聞いてくれた。数日後、鹿鳴館でビジュアル系のライブを初めて見た。開場何時間も前から階段でたばこを吹かし、虚ろな顔でカップラーメンをすする女の子たち。ライブが始まった。二階席から見る彼女達のヘッドバンキングは金髪の草原みたいだった。甲本ヒロトはロック(彼はロックンロールと言った)を「第三の考え方」と言っている。ロックとは笑えないことだ。あの日、ビジュアル系バンドは、とても恥ずかしいことを歌っていた。でもぜんぜん笑えない。それはバンドがロックだからじゃない。バンギャルたちがロックだからだ。そんなバンギャルたちがぼくは大好きです。

長谷部大輔

(c)2011 アートポート

『たまの映画』でブレイクした今泉力哉の『終わってる』に続き、
青春Hシリーズは次世代を担う若手映画監督を応援します。

セカンドシーズン第3弾のメガホンを執ったのは、東京藝術大学映像研究科出身の新鋭、長谷部大輔。ユーロスペースで公開された、不思議な魅力とハードな内容から物議を醸した監督作『浮雲』は、ドイツで開催されたニッポンコネクションでそのハードコアな内容から途中退出者が続出したという大問題作。10年に公開された初の商業用オムニバス映画『人の砂漠 棄てられた女たちのユートピア篇』も『浮雲』とは全く違う繊細なタッチで高い評価を受け、次世代を担う映画監督として各方面から熱い注目を浴びています。そして長谷部監督が今回挑んだテーマはズバリ「エゴ」。タランティーノ作品ばりのいかがわしい登場人物たちが、コーエン兄弟作品ばりの人間性を剥き出しにし、両監督に共通するエンターテインメント性も決して忘れない、どこか懐かしくもあり、また近年の日本映画には無い匂いを持った映画、それが『絵のない夢』です。


見えないからこそ、見えるものがある。

サングラスに白杖という出で立ちの視覚障害者、一郎。彼が出会い系で買ったのは、ビジュアル系バンドの追っかけをしているバンギャルの真琴。バンギャル仲間からは金や体をバンドに貢ぐ、「ミツギ」と呼ばれ敬遠されている真琴は、全身全霊でバンドのボーカル・SEIYAに金も体も明け渡していたが、ついに金が底をつき、売春をしたのだ。一郎の鞄に大金が詰まっているのを見た真琴は、彼が盲目であることをいいことに盗もうとするが、ばれてしまう。しかし真琴の奔放な振る舞いが気に入った一郎は、帰るところのない真琴と生活を共にすることになった。そんな2人の前に現れたのは視覚障害者に医療器具の販売営業をしている圭吾。彼はなんとか機器を売りつけようとするが、一筋縄ではいかない一郎と真琴に翻弄されっ放し。挙句に真琴に惚れてしまう始末。人の目には見えない人間の本質が見える一郎、金しか見えない真琴、真琴しか見えない圭吾。そして一郎の鞄の中の大金。3+1のエゴと欲望がクライマックスに向けて急スピードで走り出す!

【監督】

長谷部大輔

【脚本】

金村英明

【キャスト】

もも 西本竜樹 吉田裕貴 中村はるな 中村真綾
加藤亜依 佐々木基子 高橋洋 野村喜和夫

【スタッフ】

製作:松下順一/企画:高崎正年/プロデューサー:小貫英樹 奥野邦洋/音楽:金山健太郎/アシスタントプロデューサー:松下達郎/撮影監督:安部雅行/録音・整音:松原安穂/助監督:関力男/撮影助手:浅見貴宏/照明助手:竹野智彦 廣田恒平 国枝淳志/録音助手:福井秀策/監督助手:太田衣緒 高野徹/制作担当:名倉愛/スチール:内藤基裕/制作プロダクション:東京レイダース/製作:アートポート

2011年/日本/カラー/**分/ビスタサイズ/ステレオ/HDV(一部劇場を除く)
配給・宣伝:アートポート  (c)2011アートポート